公認会計士試験の『合格率』のカラクリを紹介します。

アイキャッチ(24-1)公認会計士

どうも、公認会計士試験を受験したgordito(ゴルディート)です。

公認会計士試験の『合格率』はどう解釈したらいいの?

このような疑問を解決できる記事になっています。

なぜなら、令和元年(2019年)公認会計士試験の公表されている『合格率』等の数値を用いて、どのように解釈したらいいのか事例を用いて紹介するからです。

記事を読み終えると、公表されている『合格率』を鵜呑みにせず、中身を理解できるようになります。

公認会計士試験の合格率(令和元年)

公認会計士試験の合格率(24-2)

まず、はじめに令和元年(2019年)公認会計士試験の合格発表の内容をご覧ください(公認会計士・監査審査会のWebサイト)。

願書提出者数(a) 12,532 人
短答式試験受験者数10,563 人
短答式試験合格者数1,806 人
論文式試験受験者数3,792 人
最終合格者数(b) 1,337 人
合格率(b/a) 10.7% 


※令和元年(2019年)試験の短答式試験免除者は1,986 人。

これだけ見ると公認会計士試験の合格率10%程度だと感じると思います。

しかし、受験者の立場からすると、そういう感覚にならないのが現実です。

というのも、この公表されている『合格率』には違和感があるからです。

違和感は『合格率』に潜むカラクリによるものです。

カラクリ
  • 『短答式試験』が2回
  • 『短答式試験』免除者、『論文式試験』の科目免除者の存在

この2つによって『公表されている合格率』と『実感としての合格率』には乖離が生じています。

『短答式試験』、『論文式試験』共に1回で合格することは『公表されている合格率』よりだいぶ難しく感じます。

また、『論文式試験』だけを受験する人にしてみれば、『公表されている合格率』よりも簡単に感じます。

どういうことかよくわからないですよね。

ここからは、公認会計士試験の合格率を『短答式試験(1次試験)』と『論文式試験(2次試験)』に分解して説明します。

留意点

短答式試験に合格した者(免除者含む)だけが、論文式試験を受験できます。そして、論文式試験に合格して初めて公認会計士試験に合格したことになります。

短答式試験の合格率(カラクリ1)

短答式試験の合格率(24-3)

令和元年(2019年)の試験では『短答式試験受験者数』は10,563人で、『短答式試験合格者数』は1,806人となっています。

願書提出者数(a) 12,532 人
短答式試験受験者数10,563 人
短答式試験合格者数1,806 人
論文式試験受験者数3,792 人
最終合格者数(b) 1,337 人
合格率(b/a) 10.7%

公表はされていませんが、単純に計算すると合格率は17.1%です。

ここが1つ目のカラクリになります。

合格率17.1%の試験が1回あるわけではないのです。

従来、短答式試験は年1回でしたが、2010年から年2回になっています。

令和元年(2019年)の短答式試験の概要をご覧ください(一部、公認会計士・監査審査会のWebサイト)。

第I回短答第II回短答
答案提出者数6,610人5,604人
合格者数1,097人709人
合格率16.6%12.7%

第I回短答の合格者数1,097人と第II回短答の合格者数709人の合計が『短答式試験合格者数』の1,806人となっています。

答案提出者数の合計12,214人(6,610人+5,604人)と公表されている『短答式試験受験者数』10,563人との乖離理由は、受験者を名寄せしているためです。

『名寄せ』を簡単な例で説明します。

仮にAさん、Bさん、Cさん、Dさん、Eさん、Fさん、Gさんの7人が第I回短答式試験を受験し、Aさんだけが合格したとします(合格率14.3%)。

第II回短答式試験は、Bさん、Cさん、Dさん、Fさん、Gさん、Hさん、Iさん、Jさんの8人が受験し、Bさんだけが合格したとします(合格率は12.5%)。

補足

第I回で受験したEさんは受験を諦め、第II回にはHさん、Iさん、Jさんの3人が新たに受験

この場合、名寄せすると、答案提出者数はAさん、Bさん、Cさん、Dさん、Eさん、Fさん、Gさん、Hさん、Iさん、Jさんの10人となります。

補足

Bさん、Cさん、Dさん、Eさん、Fさん、Gさんの5人は2回受験していますが、1人としてカウントされます(名寄せ)。

最終的に、10人のうち合格者は2人(AさんとBさん)なので、短答式試験の合格率は20%になります。

この例の合格率20%にも違和感が残りますよね。

一部の人は2回受験しているわけですから。

おそらくですが、この違和感を考慮して短答式試験の合格率を出さずに、『短答式試験受験者数』10,563人、『短答式試験合格者数』1,806人だけを公表しているのだと思います。

願書提出者数(a) 12,532 人
短答式試験受験者数10,563 人
短答式試験合格者数1,806 人
論文式試験受験者数3,792 人
最終合格者数(b) 1,337 人
合格率(b/a) 10.7%

しかし、公表されている数字を見ると合格率を知りたくて計算する人もいるでしょう。

そして、短答式試験の合格率は17.1%だと思ってしまうわけです(短答式試験の合格発表のページを見れば誤解はしませんが)。

合格率17.1%の試験が1回行われているわけではない点、今回の説明で理解してください。

論文式試験の合格率(カラクリ2)

論文式試験の合格率(24-4)

令和元年(2019年)の試験では『論文式試験受験者数』は3,792人で、『最終合格者数』は1,337人となっています。

願書提出者数(a) 12,532 人
短答式試験受験者数10,563 人
短答式試験合格者数1,806 人
論文式試験受験者数3,792 人
最終合格者数(b) 1,337 人
合格率(b/a) 10.7%

公表はされていませんが、単純に計算すると合格率は35.3%です。

『短答式試験合格者数』は1,806人だったのに、短答式試験免除者数が1,986人であるために、『論文式試験受験者数』は3,792人1,806人+1,986人)となり、2倍に膨れ上がります。

これが2つ目のカラクリです。

母集団が変わってしまうのです。

先ほどの例の続きで説明します。

例(続き)

短答式試験合格者のAさん、Bさんの他に、短答式試験免除者であるKさん、Lさんが加わり、4人が論文式試験を受験したとします。そして、Kさんだけが合格したとします。

この例の結果を、公認会計士・監査審査会が公表している表に当てはめると次のようになります。

願書提出者数(c) 12人A〜Lさん
短答式試験受験者数10人A〜Jさん
短答式試験合格者数2人A、Bさん
論文式試験受験者数4人A、B、K、Lさん
最終合格者数(d) 1人Kさん
合格率(c/d) 8.3% 

この『合格率』は実態を表していると言えますかね。

誤解を生まないかと心配になるのは私だけでしょうか。

母集団が大きく変わることは影響があります。

短答式試験から受験した人にしてみれば、論文式試験だけに特化して勉強してきた猛者どもと一緒になって論文式試験を受験せざるを得ないことになってしまうので、公表されている合格率よりも難しいという感覚になります。

一方、短答式試験免除で、論文式試験だけを受験する人にしてみれば、公表されている合格率はあまり意味をなさず、論文式試験だけの合格率(約30%)を意識することでしょう。

つまり、受験者の立場によって『合格率』に対するイメージが大きく異なるのです。

まとめ

まとめ(24-5)

最後にまとめておきます。

まとめ
  • 公表されている『公認会計士試験』の合格率には違和感がある。
  • 違和感の理由は主に2つ(1.短答式試験が2回(『名寄せ』の発生)、2.免除者の存在(母集団が変わる))

公表されている『合格率』の中身がよく理解できたのではないでしょうか。

受験される方は、中身を理解した上で合格までの道すじを描いた方が対策を立てやすいと思います。

今回は合格率だけしか触れませんでしたが、公認会計士試験の概要(試験科目や勉強時間等)を知りたい方は次の記事に目を通してください。

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