【大手監査法人ランキング2022】売上増加、非監査証明割合上昇

大手監査法人ランキング2022 - アイキャッチ(115-1)公認会計士

どうも、監査法人に勤務していたgordito(ゴルディート)です。

  • 大手監査法人はコロナ禍で売上は減少しているのかな?

このような疑問を解決できる記事になっています。

なぜなら、様々な観点から監査法人をランキングしたものを紹介するからです。

大手監査法人4法人のみのランキングです。

具体的には、売上・利益ランキング、人員数ランキングやクライアント数ランキングを紹介します。

記事を読み終えると、監査法人に対する理解が深まります。

監査法人の各種ランキング(2022年版)

大手監査法人の各種ランキング2022 (115-2)

当記事では、主に次のようなランキングを紹介します。

  • 売上・利益ランキング
  • 人員数ランキング
  • クライアント数ランキング

また、各監査法人の情報は、主に次の書類等を基礎にしています。

それでは、各種ランキングを紹介します。

売上・利益ランキング

まずは売上や利益に関するランキングを紹介します。

各監査法人の業務収入(売上高)や利益は次の通りです(単位:百万円)。

トーマツEY新日本あずさPwCあらた
業務収入 A+B138,814106,431111,09856,458
 監査証明 A
 (割合)
86,143
(62.1%)
89,666
(84.2%)
85,432
(76.9%)
28,206
(50.0%)
 非監査証明 B
 (割合)
52,670
(37.9%)
16,765
(15.8%)
25,665
(23.1%)
28,252
(50.0%)
営業利益9772861,3521,787
経常利益2,7859167451,781
税引前当期純利益2,7859164331,726
当期純利益2,5504323111,207

トーマツのみ2021年6月〜2022年5月、その他の3法人は2021年7月〜2022年6月の実績。

業務収入ランキング

業務収入(売上高)ランキングは次の通りです(単位:百万円)。

業務収入
A
前期
B
前々期前期比(%)
A-B
トーマツ138,814123,676114,592+15,138(+12.2%)
EY新日本106,431104,037102,005+2,394(+2.3%)
あずさ111,098105,281105,970+5,817(+5.5%)
PwCあらた56,45854,85654,343+1,602(+2.9%)

「業務収入」は「売上高」だと考えてください。

業務収入ランキングの1位はトーマツです(前期、前々期と順位に変動なし)。

トーマツの伸び率が際立っていますが、大手監査法人4法人とも前期比で業務収入は増加しています。

トーマツが頭1つ飛び抜けた存在になりました。

PwCあらたの業務収入は他の3法人の半分程度というのも変わらないですね。

一般には、これらの4法人を4大監査法人(大手監査法人とも言う)と呼びますが、業務収入の小さいPwCあらたを除外し3大監査法人という言い方をする人もいます。

新型コロナ感染症の影響でどうなるかと思っていましたが、大手監査法人の業績は悪くないようです。

監査証明業務ランキング

業務収入のうち、『監査証明業務』に関する部分は次の通りです(単位:百万円)。

監査証明業務
(監査証明割合)
A
前期
B
前々期前期比(%)
A-B
トーマツ86,143
(62.1%)
83,223
(67.3%)
80,932
(70.6%)
+2,920
(▲5.2ポイント)
EY新日本89,666
84.2%
88,706
(85.3%)
86,001
(84.3%)
+960
(▲1.1ポイント)
あずさ85,432
(76.9%)
83,296
(79.1%)
82,770
(78.1%)
+2,136
(▲2.2ポイント)
PwCあらた28,206
(50.0%)
28,013
(51.1%)
26,104
(48.0%)
+193
(▲1.1ポイント)

監査証明業務ランキング(金額と割合)の1位はEY新日本です。

前期は2位があずさ、3位がトーマツでしたが、当期は2位トーマツ、3位があずさとなりました。

すべての監査法人で監査証明業務による収入が前期比で増加しているものの、監査証明割合は減少しています。

後ほど紹介しますが、収入増は、トーマツ、EY新日本はクライアント数の増加、あずさはクライアント当たり業務収入の改善が主要因となっています。

非監査証明業務ランキング

業務収入のうち、『非監査証明業務』に関する部分は次の通りです(単位:百万円)。

非監査証明業務
(非監査証明割合)
A
前期
B
前々期前期比(%)
A-B
トーマツ52,670
(37.9%)
40,452
(32.7%)
33,660
(29.4%)
+12,218
(+5.2ポイント)
EY新日本16,765
(15.8%)
15,331
(14.7%)
16,004
(15.7%)
+1,434
(+1.1ポイント)
あずさ25,665
(23.1%)
21,985
(20.9%)
23,199
(21.9%)
+3,680
(+2.2ポイント)
PwCあらた28,252
50.0%
26,842
(48.9%)
28,238
(52.0%)
+1,410
(+1.1ポイント)

非監査証明ランキング(金額)の1位はトーマツで、非監査証明ランキング(割合)の1位はPwCあらたです。

前期、前々期と順位に変動なし。

すべての監査法人で非監査証明業務による収入が前期比で増加し、監査証明割合も上昇しています。

業務収入の内訳を確認すると各法人の特徴がわかりますね。

EY新日本は監査証明業務の割合が大きく(業務収入の約84%が監査証明業務に依存)、トーマツは非監査証明業務の割合が相対的に高く(業務収入の約38%が非監査証明業務によるもの)、あずさは両者の中間に位置しています。

PwCあらたは非監査証明業務の割合が非常に高く(業務収入の約半分)、この点に特徴があると言えます。

営業利益ランキング

営業利益は次の通りです(単位:百万円)。

トーマツEY新日本あずさPwCあらた
業務収入 A138,814
(+15,138)
106,431
(+2,394)
111,098
(+5,817)
56,458
(+1,602)
営業利益 B977
(▲644)
286
(▲335)
1,352
(▲1,446)
1,787
(▲728)
営業利益率 B/A0.7%
(▲0.6ポイント)
0.3%
(▲0.3ポイント)
1.2%
(▲1.5ポイント)
3.2%
(▲1.4ポイント)

カッコ内は前期比です。

営業利益ランキング、営業利益率ランキング共に1位はPwCあらたです。

PwCあらたが最も効率良く稼いでいることがわかりますね。

4法人とも業務収入は増加しているのに営業利益は減少し、営業利益率も低下しています。

人員数ランキング

次に人員数に関するランキングを紹介します。

各監査法人の人員数(社員数や使用人数)は次の通りです(単位:人)。

トーマツEY新日本あずさPwCあらた
社員 A536(+11)522(▲1)594(▲1)185(+17)
 公認会計士482(+4)514(+1)557(▲2)148(+11)
 特定社員54(+7)8(▲2)37(+1)37(+6)
使用人 B6,807(+327)5,044(▲119)5,723(+145)2,647(▲193)
 公認会計士2,485(▲83)2,388(▲20)2,403(▲121)865(▲27)
 公認会計士試験合格者等1,371(+48)1,274(+19)1,331(+65)617(+39)
 監査補助職員2,858(+425)849(+96)1,259(+220)1,067(▲170)
 その他の事務職員等93(▲63)533(▲214)730(▲19)98(▲35)
人員 A+B7,343(+338)5,566(▲120)6,317(+144)2,832(▲176)

カッコ内は前期比です。

社員の数ランキング

社員の数と内訳は次の通りです(単位:人)。

トーマツEY新日本あずさPwCあらた
社員 A536(+11)522(▲1)594(▲1)185(+17)
 公認会計士482(+4)514(+1)557(▲2)148(+11)
 特定社員 B54(+7)8(▲2)37(+1)37(+6)
特定社員の割合 B/A10.1%
(+1.1ポイント)
1.5%
(▲0.4ポイント)
6.2%
(+0.1ポイント)
20.0%
(+1.5ポイント)

カッコ内は前期比です。

ここで言う社員は、監査法人の経営層(監査法人に対して出資)の人たちだと考えてください。

一般に『パートナー』と呼ばれる人たちです。

社員の数ランキングの1位はあずさです。

特定社員の割合ランキングの1位はPwCあらたです。

PwCあらたは非監査報酬の割合が非常に大きいと紹介しましたが、特定社員(公認会計士ではない社員)の割合も他の3法人と比較して大きくなっています。

使用人の数ランキング

使用人の数と内訳は次の通りです(単位:人)。

トーマツEY新日本あずさPwCあらた
使用人 A6,807(+327)5,044(▲119)5,723(+145)2,647(▲193)
 公認会計士2,485(▲83)2,388(▲20)2,403(▲121)865(▲27)
 公認会計士試験合格者等1,371(+48)1,274(+19)1,331(+65)617(+39)
 監査補助職員 B2,858(+425)849(+96)1,259(+220)1,067(▲170)
 その他の事務職員等 C93(▲63)533(▲214)730(▲19)98(▲35)
監査補助職員等割合 (B+C)/A43.4%
(+3.4ポイント)
27.4%
(▲1.7ポイント)
34.8%
(+2.7ポイント)
44.0%
(▲4.2ポイント)

カッコ内は前期比です。

使用人の数ランキングの1位はトーマツです。

監査補助職員等割合の1位はPwCあらたです。

すべての監査法人で公認会計士の数が減っています。監査法人以外の働き口が増えてきているのでしょうか。

一方、採用人数を多少増やしたか、または監査法人をすぐに辞める人が減ったのか公認会計士試験合格者の数はすべての監査法人で増加しています。

監査補助職員等を上手く活用してきたのがPwCあらたですが、トーマツやあずさも監査補助職員等の割合が大きくなってきています。

クライアント数ランキング

次はクライアント数に関するランキングを紹介します。

クライアント数は監査証明業務非監査証明業務に分けて紹介します。

監査証明業務のクライアント数は次の通りです(単位:社)。

トーマツEY新日本あずさPwCあらた
クライアント数
(監査証明業務)
3,244(+12)3,735(+54)3,482(▲156)1,157(▲1)
 金商法・会社法監査840(▲40)865(▲36)724(▲58)142(▲3)
 金商法監査12(±0)53(±0)30(▲2)51(±0)
 会社法監査1,096(+6)1,247(▲21)1,351(▲24)439(+3)
 学校法人監査62(▲2)79(▲1)41(▲3)1(▲1)
 労働組合監査24(▲1)7(±0)13(▲2)-(±0)
 その他の法定監査559(+31)723(+76)588(+5)234(+41)
 その他の任意監査651(+18)761(+36)735(▲72)290(▲41)

カッコ内は前期比です。

一方、非監査証明業務のクライアント数は次の通りです(単位:社)。

トーマツEY新日本あずさPwCあらた
クライアント数
(非監査証明業務)
2,868(▲199)1,863(▲289)1,999(▲38)1,233(+28)
 うち大会社等487(▲144)490(▲106)561(▲29)87(▲6)

カッコ内は前期比です。

クライアント数(監査証明業務)ランキング

トーマツEY新日本あずさPwCあらた
業務収入
(百万円)A
86,143
(+2,920)
89,666
(+960)
85,432
(+2,136)
28,206
(+193)
クライアント数
(社) B
3,244
(+12)
3,735
(+54)
3,482
(▲156)
1,157
(▲1)
クライアント当たり業務収入
(百万円/社)A/B
25.6
(▲0.1)
24.0
(▲0.1)
24.5
(+1.6)
24.4
(+0.2)

カッコ内は前期比です。

クライアント数(監査証明業務)ランキングの1位はEY新日本です。

クライアント当たりの業務収入(監査証明業務)の1位はトーマツであり、監査証明業務の収益性が高いと言えるでしょう。

前期の記事では、クライアント当たりの業務収入は大きくなっていくだろうと予想していましたが、ほぼ横ばいですね。

あずさはクライアント当たりの業務収入が改善しています。

あずさのクライアント数は前期比でそれなりに減少していますが、比較的単価の低いクライアントとの監査契約を更新しなかったのかもしれません。

クライアント数(非監査証明業務)ランキング

トーマツEY新日本あずさPwCあらた
業務収入
(百万円) A
52,670
(+12,218)
16,765
(+1,434)
25,665
(+3,680)
28,252
(+1,410)
クライアント数
(社) B
2,868
(▲199)
1,863
(▲289)
1,999
(▲38)
1,233
(+28)
クライアント当たり業務収入
(百万円/社)A/B
18.4
(+5.2)
9.0
(+1.9)
12.8
(+2.0)
22.9
(+0.6)

カッコ内は前期比です。

クライアント数(非監査証明業務)ランキングの1位はトーマツです。

クライアント当たりの業務収入(非監査証明業務)の1位はPwCあらたです。

非監査証明業務のクライアント当たりの業務収入は監査証明業務のそれとは異なり、各法人で金額が大きく異なります。

トーマツの勢いが良いですね。

まとめ

最後に簡単にまとめます。

まとめ
  • 売上(業務収入)ランキングの1位はトーマツ。監査証明業務に限定した場合、EY新日本がトップであり、非監査証明業務に限定するとトーマツがトップ。非監査証明割合が圧倒的に高く、また営業利益率の首位となっているのはPwCあらた。
  • 社員の数が多いのはあずさで、特定社員割合が大きいのはPwCあらた。使用人の数が多いのはトーマツで、監査補助職員等割合が大きいのはあらた。
  • クライアント数(監査証明業務)のトップはEY新日本だが、クライアント当たり収入(監査証明業務)のトップはトーマツ。クライアント数(非監査証明業務)のトップはトーマツだが、クライアント当たり収入(非監査証明業務)のトップはPwCあらた。

いかがでしょうか。

監査法人に対する理解が深まったのではないでしょうか。

今回、ほとんど触れていませんが、実は大手監査法人以外の監査法人もたくさんあります。

上場会社を監査している監査法人の一覧(110法人)に興味がある方は次の記事をご覧ください。

【監査法人一覧】110法人を売上高順に列挙します。
監査法人と言えば、大手監査法人しか知らない人がほとんどでしょう。しかし、上場会社を監査している監査法人は100を超えます。上場会社を監査している監査法人の売上高、被監査会社の数、社員数等をまとめたので、ぜひご覧になってください。